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2013/03/31

Elona春のSS祭

快夢のお題は「人間のステーキ」です!できれば作中に『井戸』を使い、猫嫌いの『タム』を登場させましょう。 #ElonaSSfesOdai http://shindanmaker.com/331820

というわけで、vivi氏主催のElonaSSfesに参加してみました('ω')



おぉーい、誰かー。いませんかー。
いやぁ参ったな、今の時間だと村人は畑に出払っているし。
あぁ全く。こんなジメジメした穴底からは一刻も早く抜け出したいのですがね。
それにしたって空が青い。猫もいないのは不幸中の幸いですよ。
こんな狭い場所であの毛むくじゃらに囲まれたらと思うと……ブルブル!
全く、あいつらが好きだなんていう連中の気が知れません。
家の庭を我が物顔で歩き回るし、園芸道具を取りに行けば小屋の前で寝そべっているし。
応接間のソファを引っかき傷だらけにした奴もいたな! あぁ全く。
人の言葉も聞かないバカのくせに、我がままばかり押し付けてくる。
そして、気に入らないものは隠し持った爪で切り裂いてくる、卑劣なけだもの!
おぉーい、誰かー。誰かー。
参ったなぁ。落ちた時に足をくじいた様で、這い上がるのは無理そうですよ。
水は枯れているから溺れ死なずに済みましたが、このまま誰にも気づかれずに餓死というのは勘弁願いたいですね。
それにしたって空が青……ん? 何か光った。痛っ!? あー……何だ? 割れた空き瓶?
おい誰だ、危ないじゃないか! 誰か? いや、丁度良い所に来てくれた!
おぉーい、あんた! そう、あんただよ! 
いやぁ、ふとした拍子に足を滑らせてしまってね、ここから出られず困っていたんだ。
済まないが私を引っ張り上げてくれないかね。ああ、もちろん礼はさせてもらうよ。
何だって? 少し待ってろ? ああ待つとも、早めに戻ってきておくれよ。
あぁ全く。一時はどうなる事かと思いましたよ。影の長さからして昼時ですかね。
おっと、また何か落ちてきた。危ないなぁ、何だこの茶色い毛むくじゃらは。
ヒッ! ね、猫!? よりによって猫!! なんでこんな時に! わざわざここに!!
おうちに帰りたい? 知らないよ! 帰りたいのは私の方だ! 失せろ、シッシ!!
あああ、早く、早く来てくれ。こんな狭い地の底で猫と一緒に死ぬなんてまっぴらだ! 早く!
あ、あんたか! 待ちわびていたよ。頼むから早くここから出してくれ!
ん? 何か垂らされた。おお、頑丈なロープじゃないか。これなら私をつないでも切れたりしないな。
おぉーい、もうちょっと下まで垂らしてくれないかね。これじゃ体に結び付けられない。
もうちょっと、もう少し……あぁもう大事なときに足元をうろつくんじゃないよ!
おい何だその目は。蹴られたのはお前が近寄るからだ、私はこれっぽっちも悪くないぞ。
ひぃっ!? 殺される! もういい、あんた! ロープは掴んだから早く引っ張り上げてくれ!
いてて、壁に背中がこすれる……ははっ、助かった。ざまぁみろ、お前はそこで独りくたばっちまえばいい。
しかし参ったな、腕が疲れてきた。このままじゃ手を離しちまう……今のうちにロープを少し体に巻きつけとかないと。
くぅ……もうちょい……え? 暴れるなって? このままじゃ奴のいる穴底に逆戻りなんだ、よし、肩に一巻きしたぞ。
うあっ、手が滑っ! ぐ、首が……絞ま……助げ……っ。


おいおい。苦労して引っ張り上げてやったのに、礼も出さずに死んでるじゃねぇか。
水を汲むはずの空き瓶も失くしちまったし、これじゃ助け損だよ全く。はぁーあ、力仕事をしたら腹が減って仕方ねぇや。
そういや、村の外れに人の住んでない屋敷があったな。丁度良い具合に柔らかい肉も手に入ったし、あそこの庭でBBQでもするかね。
あぁ、空も青いし、今日はステーキを食べたい気分だな。そうしよう。

―了―

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