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2019/12/01

Elona冬のSS -2019-

 大きくうねる船窓の向こうで、青い燐光が吹き荒れていた。
「ようし客人は皆、船内にいるな。いつもながら参っちゃうよ」
 船長は、ぼやきながらも水夫たちに各所の隙間を埋めて回るよう指示を出す。熟練の案内人が、空の色からエーテル風の到来を予測したのが二日前。帆を畳み、錨を下ろし、毒の大気に触れないよう扉という扉を閉ざしていく。
「来ることさえ分かっていれば、普通の嵐とそう変わらんでさあ」
 数日の立ち往生など船旅では珍しくもない。結局の所、人間は過酷な自然環境に適応しながら生き続けていた。