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2024/06/01

Elona夏のSS -2024-

 (:3)刀乙の小説が読みたいです!
「複雑な贈り物」というタイトルで、できれば『剥製』と盗賊ギルドの番人『アビス』も出てくる小説を書いて欲しいです!
#EloSSfes #shindanmaker
https://shindanmaker.com/354401

盗賊ギルドが支配する街・ダルフィ。
その中心部にある大きな酒場の裏手で、ギルド員のロベシャが荷車に大きな荷物を載せた数人の男たちと何某かの手続きを進めていた。
「品目は間違いないな。行き先はパルミア、到着が遅れる様ならすぐに伝令を飛ばせ」
手短に指示を出して隊商を見送ろうとした矢先、路地裏の奥から一つの影が音もなく歩み寄った。
「ロベシャ、その商品はなんだ」
「っ!? ア、アビスさんか。お疲れ様です!」
ロベシャはふいに現れた盗賊ギルドの番人を認めるや、頭を下げて挨拶をする。
アビスは畏まる男に目もくれず、荷物を覆う布を外してゆく。隊商は抜き打ちの検査をじっと見つめていた。
「剥製か。相手はいつもの貴族だな。“量“は?」
「はい、前回と一緒です。ただ最近は衛兵の目も厳しくなってきたので、玩具も多めに」
アビスは懐から巻物を取り出し、起動の呪を唱える。開かれた羊皮紙は淡い光を放ち、パラパラと零れ落ちた。
「‥‥詰め物の位置は問題ない。犬に嗅がせても安心だな」
番人の声を聞いて、ロベシャと隊商の緊張が解けた。
ダルフィの交易には違法な物品も含まれる。その中でも”薬”は貴族階級に好まれる太い商品だ。
もちろん大っぴらには出来ない。出来ないからこそ目隠しをする。
上流階級の教養あふれる美術品に傷をつけてまで腹を探ろうと意気込む衛兵はいない。
剥製は商売にうってつけの贈り物だった。
「こいつ以外は」
アビスは徐ろに腰の剣を抜くと、荷物の一つを刺し貫く。
がたりと、死んでいるはずの箱詰めが震えた。
剣を抜いて躍りかかってくる隊商の男たちに向けて、アビスは引き抜いた剣を振り払う。
じくじくと灼ける刀身から剥製の血潮が放たれるや、男たちは悲鳴を上げて己の顔を押さえた。
路地裏の奥へ駆けていく足音にナイフを投げる。
「ぎゃっ」
アビスは隊商の男たちにとどめを刺すと、尻を押さえて逃げ惑うロベシャを蹴倒した。
「ア、アビスさん、違うんだ。違」
「その辺の言い訳は、地下の”主治医”がじっくりと聞いてくれるよ」
主治医の名を聞いた途端、ロベシャは恐怖に顔をひきつらせて懇願する。
「後生だ! 今すぐここで殺してくれぇ! や、やだ‥‥」
もはや興味も無さげに、アビスはどこからともなく現れたギルド員たちに内通者と荷車を任せてその場を立ち去った。

-了-

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