Elona夏のSS -2018-

(:3)刀乙のお話が読みたいです！
「燃え上がる笑い声」が登場する、できれば『プチ』と伝説の職人『ガロク』も出てくる
お話を書いて欲しいです！
#EloSSfes
https://shindanmaker.com/354401



雪原に佇む工房から、今日も炎の歌が聞こえてくる。
それはいつもと音色の異なる、何か特別な工程を示している様だった。
鍛冶場で槌を振るうのは、伝説と謳われる職人のガロク。
金床に横たわる剣身を見据え、腕を振り上げては呪言を一葉、振り下ろしてまた一葉。
古き言葉が紡がれる度に、溶解炉が燃え上がる笑い声を増していく。
その背中を、灰毛の猫が窓辺で静かに眺めていた。
黄晶に煌めく瞳が丸々と拡がり、やがて元の半月に戻るのを繰り返している。
片耳がピクリと揺れた。
どこから潜り込んだのか、プチが居住区に繋がる廊下の壁際で小さな身体を震わせている。
猫の瞳が新月まで狭まった。
「――」
音もなく着地したかと思えば、あっという間に武器の束へ身を隠す。
工房の主が、打ち終えた剣を手に出来栄えを確認している。
その様子をプチは並べられた鎧の間から覗いていた。
「――！」
わずかに、プチの逃走が先んじた。
闖入者を追いかける猫が壁を蹴り、崩れた武具がプチの頭上へ。
姿勢を崩した猫が溶解炉の上へ。

ガロクが仕上げたばかりの剣を横薙ぎに振るった。

猫とプチをつまみ取り、工房の扉を蹴飛ばして外に放り出す。
「邪魔だから外で遊んでこい」
背後で床に落ちた武具がガシャガシャと悲鳴を上げた。

「ふむ、まずまずといった所じゃろう」
黒ずんだ鈍い輝きをまとう剣に、ガロクは《悪魔》の名を授ける事にした。

-了-