Caim_Kzkrのお題は「たわわなちくわ」です。できれば作中で「鉱石」を使い、赤い義眼の『クルイツゥア』を登場させましょう。EloSSfes
(^ω^)‥‥
花崗岩で組まれたその建物は、赤々と燃える床が常に部屋全体を照らし、石壁の隙間から絶えず熱気が吹き出していた。
上階からは溶けた金属が階下へ流れ落ち、炎を閨とする魔獣共が我がもの顔でうろついている。
常人には耐えられぬ煉獄に、一画だけ外界と変わらない温度の部屋が設けられていた。
そこで、一人の女が身体の前面を白い布一枚で覆っただけの艶やかな姿で歩き回っていた。作業の邪魔にならぬ様にと頭の後ろで縛った深紅の髪はたおやかに揺れ、赤縁の眼鏡が時おり光を反射する。
女の名はクルイツゥア。ここ灼熱の塔を統べる主にして、人ならざる齢を重ねる魔女と恐れられていた。
彼女は腰の高さにある調理台の上で白い粘土状の塊を延ばすと、壁に備え付けられた棚の奥から腕の長さ程の鉄杭を取り出し、その周囲に巻きつけた。その作業を何度か繰り返すと、白い棒の束をかまどの中に吊るし、部屋をあとにする。
暫くして、クルイツゥアがバケツと火箸を手に提げ戻ってきた。
彼女は火箸の先をバケツに入れると、中から真っ赤に焼けた鉱石の欠片を取り出し、かまどの奥に放り込んでいく。
二度手間に見えるが他の部屋では温度の管理が難しく、調理には適さないのが現状だ。幸い、廊下に石ころを放置しておくだけで手頃な熱源に変わる。
かまどの蓋を閉じると、次は火に掛けた鍋の様子を見に向かった。
鍋の具をかき回している間、彼女は徒然と夫の事を考えていた。彼の姿を思い浮かべるだけで自然と顔が綻ぶ。黒く焼けた肌の匂いに心安らぐ。最近になってお腹の周りが少し弛んできたかも。献立や食事の量に気を配らないと。たまには二人で旅行に出かけてみたい。何処にという訳ではないけれど。同じ景色を見て、同じものを食べて、同じベッドに横たわるなら、何処へでも。
おたまで汁を掬い、小皿に移して味を確認する。もう少し濃いめが良いか。塩は控えたい。適当に火竜をのして血を加えよう。決めた。
再び部屋を離れ、戻ってきたクルイツゥアは血の滴るおたまを鍋に漬け、味見を重ねる。良し。
一人頷く彼女の鼻を、微かに焼ける匂いが香った。
かまどの蓋を開けば、鉄杭に巻かれた魚のすり身がフワリと食欲をそそる香りを放っている。
大食漢な夫の為に、たわわに吊るしたちくわを纏めて取り出すと、クルイツゥアは鉄杭を一本一本丁寧に引き抜いた。
パルミア北部に広がる未開の森の先、大地を食らいて噴き上げる灼熱の塔は、今日も陽炎に揺れている。
もう義眼は眼鏡でいーんじゃねーかな。裸エプロンで人妻眼鏡っ娘。
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