(:3)刀乙のお題は「空の聖地」です。できれば作中で「炎」を使い、ルミエスト墓地を舞台にしましょう。
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妹猫のアデオスは周囲を見渡し、敵の気配は無いと見て軽く息を吐いた。
ルミエスト墓所の掃除も手慣れたもので、炎の爆発も的確に盗賊だけを焼き払うまでになった。
魔術師ギルドでも導師の位を認められるに至り、今では後輩の育成を任される事も多い。
「そして私もイツパロトル神に仕えて久しいけれど」
墓所の西に見える大橋、その向こうの小島に広がるルミエストの町並み。
「――勿論、ルミエストはルルウィに傅く町ではありませんよ。我々は元素神を優先しますし、住民もそれぞれの生活に紐づく神を選ぶでしょう」
かつてレヴラスは尊大とも取れる言葉を、あっさりと口にした。
「――町がルルウィの聖地と見なされているのも事実です。が、実際に聖地と呼べるのは町から南、森も育たぬ空っぽの野原ですね」
風の女神が降り立った場所が聖地であるから、風を遮る一切を置くべきではない。町の発展も島の南側には伸びないのだと。
「――まぁ、人々の思惑はどうあれ、ルミエストは風の女神と因縁がある。故に聖地です」
彼の回答は当たり障りのない史実をなぞるだけのようでいて、どこか含みも感じられた。
アデオスは改めて内海に浮かぶ島を眺める。芸術の町と、手つかずの自然。
魔法の扱いにも長けてきた今、マナの流れ、元素の流れ、そして風の流れを捉えようと集中する。
「ああ‥‥」
魔術の瞳に緩やかな風の渦巻きが視えた。
それは町どころか島全体に覆いかぶさるほど巨大で、肌に触れても気づかぬほど薄っすらと。
「確かに、これは因縁だなぁ」
目に見えぬものでは語り継ぐにも都合が悪い。そこで先人は触れられる大地を、町を偶像とした。
「そうなると、マスターは何に備えているのかな‥‥」
レヴラスもこの微かな引っかかりを視たのだろう。それを、そう呼んで差し支えないのなら。
聖地は空にあった。
-了-
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