この記事は 定期ゲ・俺 Advent Calendar 2021 の記事です。
Story of Lost Artifact -通称SoLA-、お疲れさまでした。本稼働から1年、βテストも含めると、2年ちょっと付き合ってきた事になります。
ナーフ主軸の調整方針だったこともあり、稼働中はどうしても悪目立ちしてしまった感は否めません。これは本当に残念ですが仕方ないです。なぜなら、引退した人は過去の情報しか知らず、よりよく強化された部分もそれを試して評価するユーザーは減っていくために良い部分はどんどん隠れていきます。残ったユーザーとて、全てを知る余力はありませんからね。
そういうわけで、SoLAの不評は私があらためて語らずとも十分ですので、良かった点をここに記しておきましょう。
SoLAってどんなゲーム?
「Story of Lost Artifact」は、たくにこ氏をメインGMにチーム運営された定期更新型ゲームです。
女神により創造された世界ラメルディア、過酷で鮮やかな大自然と悠久の齢を重ねる遺跡群、そして何処からともなく漂着する異界の物品に‥‥冒険者。
それらが集まる町ラメルドを舞台に、私たちの冒険が始まります。
SoLAは、この「ラメルドを拠点とする冒険者をロールプレイするためのシステム」を組み上げているように感じました。キャラ設定のフックとなる豊富なクラスに、各能力値毎に意図されたスキルツリー。そして設定したスキル名を自由に改名できるだけでなく、スキル使用時に台詞を仕込む事も出来ます。もちろん、戦闘中に選ばれる他の行動宣言もカスタマイズ可能でした。
これにより、戦闘ログが文字と数字の羅列を越えて物語性に富んだ血湧き肉躍る舞台を演出してくれます。仲間との連携はもちろん、対戦相手を好敵手とみなして丁々発止の掛け合いが多く生まれました。そしてそれはプレイヤーキャラクター(PC)だけでなく、我々に立ちはだかる敵NPCもまた物語性を持つという事です。
これを最も強烈に感じられたのは、やはり登場NPCが予め決められているメイン・サイドストーリーと物語戦でしょう。配役が定まっているので専用の舞台装置を用意できます。とにかくストーリー戦の雰囲気や進行が熱く、何度も読み返したくなります。
また、いわゆる所持金(メル)をフレーバーと割り切ったのも革命的でした。もちろんアイテムを購入する仕組みはありますし、そちらのリソースは限られていましたが。しかし、PCの設定として金持ちのキャラだったり、逆に借金を背負っていたり、といった境遇を自由に演出できる事でロールプレイが一層賑わいました。
そしてフレーバーにすぎない改変自由な数値であっても、ひとたび定めれば自発的にそのキャラらしく振る舞うようになるものです。コツコツと借金を返済する者もいれば、町に寄付する者、残高が減るのを嫌ってメルを消費するスキルを封印する者。様々なキャラクターが金を用いてラメルドを生活していました。
プロフィール画面でも、時間経過に合わせて昼夕夜と背景が変わりました。これがまたラメルドでの生活に没入感を与えます。月のひみつには度肝を抜かれました。
全体チャットは町の大通りであり、拠点が欲しければ個室のルームを建てる事もできました。ルームといっても裏通りや浜辺といった舞台を用意するのも自由ですし、プレイヤー達が自由にラメルドの解像度を高めていったと思います。
おそらくは、この様な箱庭でワイワイ集まる遊び方を想定していたのだと思いますし、もしそうであるなら、その目論見は成功したと言えます。
実際、キャラクターを演じるという点でSoLAはとても優れています。ゲームにまつわる不平不満も、その多くはクラスやスキルの下方修正に関するものであり、言い換えれば戦闘バランスやレベルデザインに対するものです。何だかんだでゲームの主軸は損なわれなかったからこそ、最後まで付いてきたプレイヤーもいるのでしょう。
一方で、メインストーリー終了後のコンテンツ不足は明らかにアクティブユーザーを減らしたと思われます。人間は同じことを続けていると飽きますし、そこで高難度クエストに挑もうとなると、上記の戦闘バランスに翻弄されます。噂程度でしたが、追加のサイドストーリーくらいは欲しかった。
ですが、私の記憶が確かであればSoLAは運営チームが初めて作った不特定多数を相手にするゲームだと聞き及んでおります。初めての作品でこれだけのものを出してくるのは、とてつもない事です。そして私はラメルディアの続きを見たい。
これもまた噂程度に捉えておくべきですが、もし次期があるなら、まずはこのラメルドの冒険譚で得られた経験を良い所も粗かった所もすべて確認して、より創造的に調和を高めていければと願っています。迷ったら初心を振り返りましょう。
カティ=ダッドという男。
ここからは私が演じたPC、No.359 カティ=ダッドについて記します。
旅の修道士を名乗る男、カティ=ダッド。
「女神の遺物ね。うん、いいじゃないですか」
βテストから続投ですが、当初プロフィールに書かれていた情報はこれだけ。胡散臭いキャラです。首尾よくお宝を手に入れた所で裏切りそうな怪しい役回りをイメージしていたと思います。メインクラスこそプリーストですが、サブクラスは割と攻撃的な、それもシーフやニンジャを選んでいました。つまり、立ち居振る舞いから「真っ当な聖職者ではない」という予測を促していたのですね。上手く伝わったかは判りません。
カティは聖職者です。が、ごく一般的なファンタジー世界で想像されるであろう中世キリスト教ベースのそれではありません。そして彼らに、多勢に迫害される立場の宗教家です。そのため、プリーストクラスの社交場であった礼拝堂にも最初は近づかないようにしておりました。
ロールプレイを楽しんでいれば、悪役に触れる機会も多いと思います。それに関するハウトゥーも増えてきましたね。
しかし、時には善悪ではなく立場の違いから対立する場合もあります。宗教の違いはその最たるものでしょう。彼らは何に仕えているのか。敵勢力と繋がりはあるのか。どういった人となりか。情報が揃うまでは迂闊に接触できません。こうしてカティは、ラメルドの孤児院に仮初の宿を借りる托鉢僧として振る舞う事に決めました。
もっとも、この辺りは礼拝堂に迷い込んだPCなら杞憂だったと判ると思います。
礼拝堂に集まる者たちは、各々の神に仕えると同時に冒険者としての振る舞いを理解していました。世界の広さを知る者たちです、内心はどうあれ事実として数多の神が存在する事を知っており、時には自分と異なる思想や価値観を持つ者とチームを組んできた冒険者の在り方です。冒険者であるうちは相手の信条に踏み込まず、聞かれもしないのに自らの素性をひけらかさない。
そういう事ならば、彼らとも交流を深め、不審な人物ではないと印象づけるのが得です。また、町の奉仕活動にも加わり模範的な聖職者としての印象を与えておきます。孤児院への寄付として、クエストで稼いだメルを定期的に一定量減らしてきました。
その一方で、闘技場に通っては体を鍛えたり、時には決闘を挑んだり挑まれたり、町にモンスターの群が来襲した時は荒々しく叫んで普段は見せない笑顔を浮かべたりもしました。あの時は陽動のために過剰な演出を意識しましたが、つまりはそういう策略を行う立場の人間という事です。大規模な戦闘の帰り、ひとり戻って死体の埋葬を行いましたが、その際に死霊術で死体に自らの墓穴を掘らせておりました。
困った時に相談できる人格者かもしれない。本心を隠す油断ならない奴かもしれない。その様な二面性を少しずつ公開していきました。
キャラ設定というのものは最初に全て用意するものとは限らず、ロールの過程で増えたり再解釈が進んだりする事もあります。現実でも付き合いが長い人ほど今まで知らなかった側面が見えてきたりしますし。そういう意味では、カティ=ダッドもラメルドの冒険を通じてより大人になっていったのかもしれません。
ニョグンってなに?
おお、《臥せたる母》よ。
世界は始まりのひとの死より生まれ、
骸は大地に、末期の吐息は風となりて天地をわけた。
我らの死は新たな始まり。我らの別れは明日の出会い。
やがて我らの眠りを木々が覆い隠すだろう。
森は獣の腹を満たし、獣は森を肥やすだろう。
我らは恵みに頭を垂れ、やがて世界の礎に加わろう。
我らを啄む鳥は地平へ羽ばたき、明くる世界へ種を運ぼう。
カティを連れていったPCたちは彼の台詞を見る機会もあったと思います。そこに出てくるニョグンとは、カティが仕える大地母神《臥せたる母》の叔母にして氷原の主、奈落のクレヴァスを寝床とする北方の土着神に当たります。カードワースを知る人なら、彼らはクドラ派と呼ばれる人々だといえば伝わるでしょうか。
カティがその地方の生まれなので、神との距離感は大母よりもニョグンが身近な信仰対象です。もう少し暖かい土地に下れば大母の信者が多くなりますが、それ以前に多数派である教会が幅を利かせていますので一気に血生臭くなりますね。
万物流転、天地の運行、盛者必衰といった世界の巡りを司る勢力です。教会がある要素を上下に分けるとしたら、大母は左右に繋がりを示します。そこで生者と死者を分かつのは天国や地獄ではなく、同じ大地にありながらも時の流れで遠ざかる距離となります。なので、不死者が現世に存在する事自体は忌避しませんが、本来あるべき流れが滞って歪みが生じているならば、その状態に対して是正を促す事になります。
しかし中には横の繋がりのみに注目し、死者を操ったり鬼を使役する危険な集団もいます。穏健派であろうと強硬派であろうと、あなたが遭遇した灰色の衣は力ある存在だと知っておくのが賢明でしょう。
旅は続く
ひとまず、ラメルドを舞台にしたカティの冒険は終わりました。彼は一旦リューンに向かい、同志と情報交換や向こうでの活動を始める事になります。あなたの立場と状況によっては敵として立ちはだかるかもしれません。冒険者として上手い落とし所を提案するかもしれません。
いずれにせよ、今回は舞台のひとつが幕を下ろしただけです。ロールプレイとは目を開けて見る夢と誰かが言っていた気がしなくもないです。
あなたのものがたりは、いつでもどこまでも遥か彼方まで広がっています。
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