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2016/06/01

Elona夏のSS -2016-

風切快夢の小説が読みたいの!
「野良ごちそう」が登場する、できれば『魔物』と爆弾魔『ノエル』も出てくる小説を書いて欲しいの!
#EloSSfes https://shindanmaker.com/354401
('ω')
(ε:)
(,m,)
(:3)
(/ω\*) チョッピリ アダルト



曇天の昼下がり。ダルフィの郊外に広がる森の中で、武装した数人の男が痩せた女と荷車に乗る少年を囲んでいた。
「荷物に手違いはなし。じゃ、これが代金ね」
女が男たちの一人に金貨の詰まった袋を渡す。薄青い瞳とは真逆の、燃えるような赤い髪が印象的だった。
「ノエル姐さんの頼みとあっちゃ断れないからな。まぁ、俺たちのいない所で使ってくれよ」
どこか眠たそうな目つきの男が、報酬を懐に仕舞いこみながら他人事のように告げる。
ノエル。ごろつきの集うダルフィでも一目置かれる爆弾魔だ。
悪徳の街にもルールがあり、邪悪な心にも限度はある。ノエルはそこから外れていた。
ただの狂犬として殺されずに済んでいるのは、彼女の強さもさることながら、その偏執的なまでにこだわる爆弾製造とその効果が、盗賊ギルドにとっても利益があるからに他ならない。
もっとも、あまりに大掛かりな~そして凶悪な~爆弾は、まだ彼女の実力と設備では作り出せないため、時おり軍の横流し品を秘密裏に購入していた。
シエラ期のイルヴァで、こういった危険物を製造できる国は限られている。それはパルミアではなく、各国の外交や紛争を踏まえると、表沙汰には出来ない代物だ。
だから、隠れて取引する。
ギルドの長はお見通しだろう。それでもダルフィの街なかに王族が頭を悩ませる問題を持ち込まなければ、それでいい。
男たちは去り、ノエルも使いの少年に荷物を載せた馬を任せると、別々の方向へ歩き出した。
彼女が外から荷物を運び入れるのは、色々と面倒なのだ。

ふと、ノエルは足を止めた。
肉の焼ける匂いが微かに漂ってくる。野営する冒険者か、それとも魔物の類か。
風上へ慎重に近づいていく。
すると、森の開けた場所に勢いの衰えた焚き火と、串を通した何かの肉。でっぷりと太った蛙の丸焼きもあった。
「品のない焼き方‥‥オークのごちそうかしら?」
耳を澄ませても魔物の気配は近くに無い。焚き火に歩み寄り、しゃがんで焼けた肉に軽く触れる。まだ温かい。
周囲を見渡せば、地面の草むらがあちこち踏み荒らされていた。
ノエルは唇の片方を吊り上げると、懐から取り出した茶色の包みを蛙の中に押し込んだ。
立ち上がって別の包みを草むらに幾つか放り込み、木立の陰に身を潜める。
「火力は大事よ。教えてあげる」
これから起こる余興を考えると、彼女の左手は知らず知らずのうちに腰当ての下に潜り込んでいた。

やがて騒がしい声が森の奥から姿を現した。
人間よりも一回り大きな、鼻の潰れた三体の亜人。ノエルの予想通りだ。
オークたちは言い争いながら焚き火の跡まで戻ってくると、一人が蛙の串に手を出し隣のオークがそいつの頭を殴りつけ、獲物を奪い取る。どうやら食料の分配で揉めていたらしい。
左手の中指が徐々に濡れてくる。息を殺して見つめていると、蛙を手にしたオークが口をあんぐりと開き、一息に頬張ると同時にノエルは右手に握った仕掛けのボタンを押した。
「~~~~~~~~~~!!」
小さな爆発音と同時に、撒き散らされる赤黒い飛沫が彼女の髪にまでこびり着く。思わず下腹を弄る指に力が入り、声を漏らさぬよう肩を震わせてうずくまった。
蛙を食べ損なったオークは下顎から上が綺麗に吹き飛んでいた。
仲間の死に様を呆然と見上げていた二人は、直立不動の死体がドサリと倒れこむ音で我に返ると、腰を抜かしたままギャアギャアと焚き火から離れだした。
再び小さな爆発音が二回起こり、ようやくノエルはあられもない声を上げる。
一人は右腕と頭部がグチャグチャに崩れていた。もう一人は腰から下を失いガクガクと震えていた。
「あへぁ~~‥‥最っ高」
視界は絶頂の白から血臭まとわりつく赤へと戻り、仰向けに横たわりながら余韻に浸る。
赤はいい。ノエルは赤が好きだ。腐れ切った灰色の世界で唯一、赤だけが鮮烈で、価値があり、あたしを満たしてくれる。
「もっと‥‥真っ赤に染め上げたいな‥‥なにもかも」
外れた爆弾を回収するのは後でもいい。彼女は朗らかに微笑みながら目を閉じた。

-了-

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