「人気の境界」が登場する、できれば『コイン』と火炎竜『ヴェスダ』も出てくるSSを書いて欲しいです!
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('ω')
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:( ゙゚'ω゚'):< ニンキノ キョウカイ ッテ ナンダ !?
傭兵射手のラスコは、数日前から嫌な予感に悩まされていた。最初は、ヴェルニースの酒場でこの洞窟を探索する話が持ち上がった時に放り投げたコインが、縁を立ててテーブルの上を踊った時だ。仲間たちは幸運の兆しだと酒盃を上げたが、ラスコはどうにも胸騒ぎを覚えた。
ヴェルニースの南西に位置する山岳地帯は今も火山活動が続いており、険しい岩肌の所々から臭気の強いガスや水蒸気が溢れでている。
その奥に、古の巨人が鍛えた決して消える事のない炎の剣が封印されているという話はラスコも耳にしていた。そして、そこに辿り着くであろう道筋を、命乞いする山賊の一人から聞き出したのだ。
当の山賊たちも本当に利用していたのか疑わしい森の獣道を抜けると、目の前に噴煙が霞む岩山が開けた。眼下に広がる湖と対照的な、人の立ち入りを拒む険しい眺めだった。
頭上の落石を魔術師の聖なる盾で逸し、岩陰に潜んだ子鬼たちの襲撃を打ち払いながら火口を目指す。飛竜に遭遇しなかったのは幸運だったのだろうか。
「今更だけどよ、こんな人気のない場所にお宝なんて本当にあるのか不安になってきたぜ」
仲間の戦士がぼやく。戦闘以上に周囲の自然環境が疲労を募らせていた。
「確かに、人知の及ばぬ土地ですね。思えば麓に広がる森が、人と、そうでないものを隔てる境界なのかもしれません」
魔術師が刺繍入りの手巾で鼻を押さえながら答えた。
「これだけ匂いのひどい場所で暮らしていたら、鼻が捻れちまうよ」
ラスコは乳鉢ですり潰したスペンスウィードの絞り汁を鼻の穴に擦り込みながら、残りを仲間に回す。
「一時的にだが、ここいらに漂っているガスの毒を防げる」
ひとしきりの休憩と準備を済ませると、冒険者たちは火口を目掛けて歩き出した。
本当の境界は、火口の内と外だった。ラスコたちが降りていった先は、明らかに火界の生物が蠢いていた。
四方から襲いかかる炎の猟犬や燃え盛る甲殻類を倒しながら辺りを観察する。
「おい、あれだ!」
噴煙の合間に巨大な獣の骨が散らばっているのが見えた。近づいてみると、その頭骨の下から刀身の柄と思われる部分が覗いているではないか。
「引っかかってるな。ラスコ、俺がこの骨を押し上げている隙に、引き抜けないか試してくれ」
「わかった」
英雄の魔法で身体が一回り膨れ上がった戦士が雄叫びを上げながら踏ん張ると、巨大な頭骨は僅かに地中から浮き上がった。ラスコも張り裂けんばかりに身体を膨らませながら、両手で柄を握り渾身の力を込める。
魔術師が何か叫んだ。と同時に剣は抜け、勢い余って灼けた地面に尻餅をつく。その直後、剣を咥え込んでいた頭骨は地面を揺らし、戦士が立っていた場所には真っ黒な消し炭が残されていた。
「ラスコ、逃げましょう!」
隣で顔の半分が焼けただれた魔術師が懸命に氷の嵐を唱えていた。吹きすさぶ氷刃の向かう先で、巨大な炎の柱が渦巻いている。いや、それは大きく羽ばたくと長い首をもたげて叫び声を上げた。熱風に煽られるかの様にあちこちから溶岩の飛沫が噴き上がり始める。
ラスコは懐から取り出した脱出の巻物を広げると、マナの反動でふらついた魔術師を左手で抱き寄せ、右手の剣で燃え盛る炎を威嚇しながら後じさった。
「くそ、こんなのが居たんじゃ飛竜も寄り付かないわけだ」
後もう少しで避難できる。ラスコはただひたすら神に祈った。
-了-
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