(:3)刀乙のお題は「のんびりした人形」です!できれば作中に『水』を使い、《願いの神》を登場させましょう。
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それは、生きているのかどうか解らないけれど。
いつ頃からか屋根に引っかかった小さな人形は、町の暮らしをただ見つめていた。
朝日が昇る前に出かける人。煙突から湧き出す煙。賑やかな往来。路地の喧騒。
月に照らされ歩く人。家路を示す町の灯り。見つかりたくない仕事をする人。微かな悲鳴。
日は昇り、沈み、また昇っては沈み、月は巡り。人はただ生きて。
「何を願う?」
それはある日、転がり落ちた。
井戸の水で喉の渇きを潤していた男が、ぽかんと口を開けて。せっかく飲んだ水がこぼれて服を汚すのも気づかず。
かと思ったら、たくさんのお金を叫んだのかな? 広場を行き交う人々が驚いた顔で男の方を振り向いて。
それから、どこからともなく現れた沢山の金に押し潰されて、男は死んじゃった。
びっくりしたのは町の人々。願いを叶える神は本当にいて、願いを叶えた男をこの目で見た。
そうなれば、俺も私も願いを叶えられるじゃあないか。どうやって?
後はもう、お祭り騒ぎ。井戸を聖地だと拝む人、そこで商売を始める人、死んだ男の姿を真似る人。水を飲みすぎて死ぬ人。
そんな乱痴気騒ぎも、月が巡るうちに次第に収まりかけたある日。今度は雑貨屋の奥さんが近所に響き渡る声で叫んだ。
何を願ったのかは知らないけれど、血相を変えて飛び込んできた店主の前で、奥さんは腰を抜かしたまま呆然とキウイを抱いていたそうな。
井戸じゃなくてもいいらしいと、再び沸き立つ住民たち。川の水を高値で売りつける人。トイレの水まで掬い出す人。
そんな賑やかな人々も、黒ずむ空が街路を濡らす雨の日はおとなしく家に籠もっていて。
こんな日は、雨垂れを啜る鳥や虫たちの誰かが、どこかで鳴いているのかな。
僕にも、いつかその日が来るかもしれないとしたら。何を願おう。
名前でも付けてもらおうかな。
-了-
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